キイロスズメバチは、日本全国に広く分布し、都市部から山間部まで様々な環境に適応しているスズメバチの一種です。特に家屋の軒下や屋根裏、壁の中、木の洞、地中など、閉鎖的で雨風をしのげる場所に巣を作ることが多く、私たちの生活空間で遭遇する機会が最も多いスズメバチの一つと言えるでしょう。その巣は、初期段階では女王蜂が一匹で作り始め、とっくりを逆さまにしたような形をしています。この初期巣は比較的小さく、駆除も比較的容易ですが、見逃されやすいのが難点です。働き蜂が羽化し始めると、巣は急速に大きくなります。最盛期には直径数十センチメートル、時には1メートル近くにも達する巨大な球状や楕円形の巣に成長します。巣の表面は、木の皮などを唾液で固めたもので覆われており、茶色や灰色の美しい波模様、貝殻模様が見られるのが特徴です。内部は複数の層になった巣盤(巣の皿)で構成されており、その中で幼虫が育てられます。巣が大きくなるにつれて、働き蜂の数も爆発的に増加し、数千匹から一万匹を超える規模になることもあります。キイロスズメバチは他のスズメバチと比較しても攻撃性が高く、巣に近づくものに対して非常に神経質になります。特に巣が大きくなる夏から秋にかけては、巣を守るために集団で激しく攻撃してくるため、大変危険です。巣の近くを通りかかっただけでも、威嚇されたり攻撃されたりすることがあります。巣の存在に気づかずに刺激してしまうことが最も危険な状況を招きます。庭の手入れや家の周りの点検などで、普段見かけない場所に蜂が頻繁に出入りしているのを見つけたり、特徴的な巣の一部が見えたりした場合は、キイロスズメバチの巣である可能性を疑い、絶対に近づかず、刺激しないように注意が必要です。そして、巣の確認や駆除は決して自分で行わず、専門の駆除業者に相談することが、安全を確保するための鉄則となります。